
いまさら観てきました。
ストーリーについては、一切の予備知識なしで観ました。「おおかみこどものナントカカントカ」という、タイトルすら覚えていない状態。ひとつだけわかっていたのは「サマーウォーズ」の人の映画、ということだけ。
個人的には「サマーウォーズ」好きなので、結構期待して行ったんですけど、なんともいえないもやもや感の残る映画でしたねー。
いちばんは「結局この映画はなにがいいたいのか」が全然わからなかったなー、と。
おおかみおとこ、おおかみこども、そういう存在をファンタジーとして描きたいのか、ドキュメンタリーとして描きたいのかというのもよくわからない。母親が子どもを育てながら自分も成長していく過程を見せたいのかな? とも考えたけど、母親(母性)の描写は結構薄っぺらいように感じたりして。決断することの大切さ? 愛というものの素晴らしさ? 前に進まなければならない人生における変化の重要性? どれもこれも、まったくもってピンと来ない、本当に描きたかったことはハテなんなのか、というのが最後までわからずじまいでした。
この映画を観て、みんなどう思うのだろう。
希望をもらうのか、勇気をもらうのか、救いをもらうのか、どうなんだろう。
私はそういったものはなにももらうことができなかった。それは「この監督とは考えが合わないな」というようなすがすがしいものではなく、繰り返しになるのだけど「で……結局なにがいいたいんだっけ」がわからないから、ということにつきます。
それは、はっきりいってしまうと、今この、わたしたちが生きている2012年夏の日本と、この映画の世界観に若干のズレがあるからなんですね。と私は思います。
時代設定の話ではないです。今の私たちが直面している(あるいは人間というものが古代から繰り返し直面してきた)問題と、この作品の内容が全然リンクしないんですよね。この映画はなにも解決してないし、なにも問題提起してないーーと感じてしまいました。もちろんそんな映画はたくさんあります。でも、それはそもそもそこで勝負しているわけではないからであって。この映画はそれでよろしかったでしょうか? というのと、じゃあかわりに何が残ったかというと、そこに戸惑うばかり、なんですね。
つまり、全然リアリティがないということなんだけど。一見家族の感動物語かもしれないけど、母性ってこんなもんじゃない。成長ってこんなもんじゃない。そして、ひとの人生というものはこんなもんじゃない、という想いばかりがつのりました。
特に母性というものは、今のこの時代に世の中でもっとも必要とされているエネルギーのひとつだと思う。それをこんな表面的に描かないでほしいぜ、という感じです。
普通に、家族とか子どもとか動物っていうモチーフは涙を誘うものだし、じーんとするシーンがないわけではない。でもそれはひとコマでしかないんですよね。それと同じくらい白けてしまうシーンもありました。なぜかというと描写が雑だからなんですよ。全体を通して省略されている箇所があまりにも多く、それがこころの描写だったり、精妙な意識の移り変わりという、いちばん描かなければいけないものなんでないの? と思うようなことだったりする。
登場人物の個性がまったくたってこないので、共感できない、感情移入はもちろんできない、でも嫌いになることもできない。出てくる人全員がそうなんですよね。初めて出会うような強烈なキャラの人もいなければ、ああ、こういう人いるよねっていう実感がともなうわけでもなく。それはなぜかというと、そのキャラがタペストリーでできているからなんですよね。いろんな要素のみで。
だからシーンごとに「じーん」とか「いやそれはないっしょ」が浮かんでは消えるだけ。という印象を持ちました。
一緒に観に行った美女もいってましたが、いろいろ詰め込み過ぎて薄まった感というのはあるかもしれない。せめてファンタジーかリアリティのどっちかを追求してほしかったなー、みたいな(その両立ができている作品も世の中にはある、がこの作品はそうではないので)。
ただアニメーションの技術、音楽の素晴らしさ、そういうところはもう本当にすごかった。雪山を走る躍動的なシーンや、風景の描写などにはただただ感動。今の映画ってすごいんだなぁ、と。
あと、この作品には「部屋に飾る花」の描写がたいへん多く出てくるのですが、その設定がとても丁寧で非常に好感がもてました。
エンドロールを見て、あの人もこの人も関わってるのかースゴイなーとボーゼンとしてしまいましたが、スタッフの豪華さと細部に目がいってしまう点で、そして結局のところ、いまのこの現実との大きなズレを感じてしまうという点で、そしてそして、観たあとにあーだこーだと考えてしまうという点で、「おおかみこどもの雨と雪」と「ヘルタースケルター」はとても似た映画だなーと思いました。
ちなみにアーユルヴェーダでは、母性とはすべての女性が持つ才能で、それを発揮させることで自らも成長していくし、対象は自分の子どもとは限らない。母性とは他者の才能を120%引き出してあげる才能のことだ、といっています。
というわけで、子育てしたこともないアンタが偉そうに母性について語るなよ、というお咎めはなしで。はい。
0 件のコメント:
コメントを投稿