2.10.12

新生サンローランと「7人の女」

今日、エディ・スリマンによる、イヴサンロ…じゃなくてサンローラン・パリのコレクションが発表されました。

もともと「好きなものに興味がある」というのがデフォルトの私は当然のごとく全然ファッショニスタではありません。好きな音楽がある、好きなアーティストがいる、好きなデザイナーがいる、好きな作品がある。それに向かって意識は動きます。だから「音楽が好き」「ファッションが好き」「写真が好き」「映画が好き」…もちろん「美容が好き」なんてとても言えない。いや、言うことはあります、もともとファッション写真が好きで〜とか、音楽が好きなんで〜みたいなことを。でも本当は全然そんなことないです。ファッションのなんたるか、写真のなんたるか、音楽のなんたるか、全然知らないです。


と、保険のように前置きしておいてアレなのですが、エディのサンローラン、個人的には非常に残念な…というか退屈なコレクションでした。サファリとかスモーキング、そういったYSLのアイコン的なものにエディのロック節(グラム寄り)のっけましたぜ、エスプリでしょー? という印象を受けました。Tweetもしたけれども、アーカイブのエッセンス+自己表現みたいなコレクションは今あんまり見たくなかったかも、て感じです。もうこういうリミックス感覚は2000年代まででいいかなというか。


サファリ?




かつてYSL Hommeで素晴らしいクリエイションを見せ、その後活躍の場をテキサスのヒゲ眼鏡の彼に奪われたものの、Dior Hommeという新しいカテゴリー(といっていいと思う)に昇華させたエディ。そのエディが! ついに! サンローランの! デザイナーに! と鳴り物入り感ハンパない中で、このコレクション? みたいな。世の中的には絶賛の声も多いみたいですけど、こんなもんでいいのですか。いや、私は全然突飛なことや奇抜なことを求めているわけじゃない。でも、もう「アーカイブの独自焼き直し」みたいなクリエイションはいらなくね? と思ってしまう。

と同時に、私のなかには、エディに対しての「見たことのないものを見せてほしい」という気持ちが大きかったのだなーと思いました。ドラマのシチュエーションが揃いまくってるなかで、水戸黄門的展開を見せられた気分です。まーそれはある意味スタイリッシュと言えるのかもしれないけど。(ふて寝)


いっぽうで、数日前にラフ・シモンズによる新生Diorが発表されましたが、これはやられたと思いました。すごい思い切ったねー、みたいな。でも別に奇抜とかではないし、アーカイブのモチーフも入ってるんですよね。それでいて完全に「見たことのないDior」だった。そこにエレガンスを感じました。ラフであり、Diorであり、でもラフとDiorの過去のどこにもないものがそこにありました。ラフのDiorはエディのサンローランに比べて話題性少なかった気がしますが、個人的には拍手。



ラフでありDiorであり。しかしながら。という。



以前、どなただったか忘れてしまいましたが、マルタン・マルジェラについて「彼はエルメスと自分のブランドのクリエイションを完全に分けていて、まったく異なったコレクションを発表しているところが素晴らしい。そんなデザイナーはなかなかいない」みたいなコメントがあって。それすごく賛成なんですけど、ある意味ラフもそうなのではないかなと思うし、それができないのがエディなのかな、というのが今のところの印象でございます。


そして、このよーにいいとかよくないとか、ほんとに図々しく、偉そうにも思っている私なのですが、この基準ってどこから来るのだろう? と思います。誰々の新譜よかったねとか、今回のライヴ最悪だったねとか、そういうのを感じるセンサーみたいなのがあるわけですが、完全に自己基準のためうまく説明できない。でも絶対的なものがなんかあるんですよね(わからないものもいっぱいあるけど)。マトリックス化できる照合データのようなものが曖昧だし、いっときは不安に思っていたのですが、いつだかのmice parade来日のときに「あーもう自分のこの感覚信じていいんだな」と確信できたので、そこはそのようにしたいと思っています。

そして、どうしてそう思うのかを自分のなかで咀嚼するために私はこうしてブログを書いているのであります。
良かったもの、好きなものはひとに伝えたいのですが、いまいちだったものとか、好きじゃないと思ったものについて書くこともあり、それは人に伝える必要あんの? って感じですよね。そこは別に共有したいわけではないんですけど…思ったことは記したいという矛盾をはらみつつでよろしくお願いします。(宛先不明)


話がそれましたが、その「感じるセンサー」というものについて。
すごく上手に使いこなして、周りにもミラクルを振りまいているふたりの、素敵な個展に行ってきました。



絵、を操るよしいさん、香り、を操るスールネさんのふたりが、7人の女性ひとりひとりについての表現を交換しあった軌跡/奇跡が会場いっぱいにちりばめられていました。
私はふたりを知っているのでよりそう感じるのかもしれませんが、そしてありきたりの表現で恐縮なのですが、112じゃないね、っていう。お互いの良さを引き出しあうだけでなく、まだ見ぬ風景のところまで進める機動力や加速力を生み出す関係ってあるものですが、ふたりの組み合わせはまさにそれ。




香りの表現も7種類。これはルームフレグランス。この水墨画最高だった。






これも香り! 某コズミック少女がモチーフ。




スールネさんの香りは非常に信頼できます。





どちらも女性らしい直感力を持っているけれども、ちひろさんはヴァータにピッタが少し、スールネさんはカパにヴァータが少し、って感じですかね。だから混ざりあうと曼荼羅みたいに円になって、四方に広がるだけじゃなくて次元を超越していくようなパワーになる。しかも、いちいち周りを幸せにするエネルギーに進化していくというか。それが素晴らしいと思った。
絵も香りも、感覚的なものと思われがちだけど、実はすごく技巧的なものでもあって。その両方(ふたりの)がマックスで使い切られているからこそ、このようなものが完成するわけで、そこには「感じるセンサー」がフル活用されているのだろう、と思いました。ほんとに素敵な展示!


そこへいくと、エディの今回のコレクションは、1(エディ)+1(イヴ)=1(エディ)、って感じがした。ということなのだと思います。はい。




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