8.9.14

つわり、私の場合




この朦朧とした状態が、永遠に続くような気がする。
つわりの時期、私の精神状態は最悪でした。世界がグレーがかった白で、どんよりと重く、昨日と今日と明日の区別がつかず、終わらない迷路を彷徨っているようでした。

つわりという名の異邦人は、モロッコ滞在中、あと3日で帰国というとき(5月7日、6週2日目)に突然やってきました。それまで呆れるほど元気だった私が、商談中、いきなり車酔い状態に陥ったのです。
幸い、出張同行のかたが良くしてくれ、その日はホテルで休ませてもらえたのですが、ルームサービスで頼んだサンドイッチが、チーズやマヨネーズ、ツナのにおいで吐きそうになり食べられず!こ…これが世に言うつわりというものか……、と愕然としたのを憶えています。翌日は言うほど酷い状態ではなく食欲もありましたが、帰国の日が最悪。気温の変化による風邪や滞在時の疲れがたまっているのもあったのか、飛行機のなかは地獄の一言でした。吐き気、眠気(でも寝れない)、寒気の3種が常に鎮座DOPENESS状態。お酒が大丈夫ならワイン1本飲んで寝てしまえるのですが、そうもいかないわけです。


つわりの症状は本当に妊婦によって異なるようで、よく以下のように分類されます。

A/ とにかく気持ちが悪く、何を食べても吐いてしまう「吐きづわり」
B/ 空腹になると吐き気がやってくるので常に何かを食べていないとならない「食べづわり」
C/ 寝ても寝ても眠くて、突然生活に支障が出るレベルの強烈な眠気が襲う「眠りづわり」
D/ 唾液が後から後から出てきて飲み込めない「よだれづわり」

…なんだけど、Aの範疇がそりゃもう広いんだな。吐かないまでも常に吐き気がつきまとうケースもあるし、何が吐き気を誘発するかもほんとに人それぞれ。よくある「グレープフルーツだけ食べられました」「つわりの時期、一生ぶんのとろろそばを食べた気がする」など、特定の食べものしか受け付けないケースも、「それがおいしくてしかたがない」というよりは、「それだけならかろうじて食べられる(=他のものは気持ちが悪くて食べられない)」ということであって、決して、ある日突然偏食家になっちゃった!みたいな愉快な状況ではないのであります。

稀に「私、全然つわりなかったんですよね〜」と仰るかたもいます。ね。いるみたいです、つわりのない人。いいよね〜。ラッキーだよね〜。ほんとに羨ましい、素晴らしいことだと思うんですが、私なりに考えると、つわりのない、ないし少ない人っていうのは性格もおおらかで体力がある人(アーユルヴェーダで言うところの、カパがメインでピッタもちょっとある感じ、で、乱れてない人、で、オージャスがちゃんとある人)に多いような気がしています。でも、そういう人なら必ずならないかっていうとそうじゃないんだな。健康でオージャスたっぷりの人で、つわりがある人ももちろんいるんですよねぇ。読めませんよねぇぇええ。つわりのヤツ。おそろしいですよねぇぇぇぇえええ。

が。つわりのいちばんの怖さは。
吐き気などの症状そのものではなく、いつまで続くかわからないところにあると思う。
また、特に初期に関しては「この状態がこれからどれだけ悪化するのか?」という気持ちを常に抱えなければならないところにあると思う。のです。

この「わからない状態」っていうのは本当に恐怖。

そう。症状も妊婦によるなら、期間も酷さも妊婦によるんです。
だから、ネットでいくら調べても、それが自分に当てはまるわけではない。これが空しいことでもあり、でも妊婦によってバリエーションが多様すぎるため色々な声がネット上にはあり、この人なら私に近いかもしれない、とかいちいち当てはめて、結果、検索がやめられないというラビリンスにはまる要因でもあったりする。


私の場合は、AとBとCが合わさったタイプのつわりでした。
まず、常に車酔い状態。空腹でも満腹でも吐き気。なので、その中間をキープするため、ちょっとでも空腹を感じたら少しだけ食べる。食べものをおいしいと思うことは基本的になく(これ、マジでかなしいことです)、吐き気を少しでも軽減させるために食べているという感じでした。
また、食べられるものが限られる、かつ流動的なので買い置きができない。たとえば、グレープフルーツゼリーなら食べられる、という状態が3日くらいしか持たない。ある瞬間に突然、それまで食べていたものが食べものに見えなくなる。というか見るのも嫌になるんですよね。

さらに、私を苦しめたのは世の中のあらゆるにおいでした。
10m先を歩く女性の香水の香りでどうしようもなく気分が悪くなる。シャンプーのにおい、洗剤・柔軟剤のにおい、スキンケア製品のにおい、ディフューザーのにおい、タバコのにおい、革のにおい、料理のにおい……世の中にはなんてたくさんのにおいがあるのだろう、と感心してしまうほどあらゆるにおいで気分が悪くなりました。当然自分が使っていた香水も使えず、残り香のあるものも身につけられない。かといって精油の香りなら大丈夫というわけでもなく、カモミールなんかはかなり厳しかったです。

モニタも見れない。10分くらい見てるともう気分が悪くなります。だから仕事が全然前に進まない。TwitterとかFACEBOOKも見れず、もちろんツイートなんてできない。何も浮かばない、それどころじゃないって感じで。
読書とか音楽聴くこともできない。とにかく頭が使えない。何も考えないで観れるドラマとか漫画がかろうじて友人になってくれます。

吐き気はあれど実際リバースすることはなく、「常に吐いてた」「一日中トイレから出られなかった」みたいな人に比べるとずいぶん楽だったのかなと思いますが、自分比では最悪なので本人的にはツライ。プラス冒頭のポエムみたいな精神的落ち込みね。生きている価値なんてないのでは?みたいな。妊婦=幸せみたいなイメージはどこぞの発祥なの?みたいな。そんなのが結局3ヶ月はフルスロットルで続きましたね。

とにかく私は仕事に支障が出ることが怖くて(フリーランスの弱さよ)、少しでもつわりをよくするためならなんでもします!という姿勢だった。「吐き続けていたけど、これを飲んだら普通に生活が送れるようになったよ」という話を聞けば、1日あたり1,200円を越える漢方も続けました。一ヶ月3万越え。しかも煮出すのに30分×毎朝という苦行。部屋中に充満する漢方のにおいに慣れることはついぞ卒業するその日までなく、旦那さんにも悪いことしたなと思っております。
結局その漢方が効いていたのかは不明なんだけど、やめるともっと症状が酷くなるのではないかという恐怖からやめることができないんですな。多種のサプリメントに依存する美魔女のかたや、なんとかドラッグに苦しむ人の気持ちがよくわかったし、人間の心ってほんと弱くて脆いなとしみじみしてしまうのでした。


一歩でも外に出るときは、においを遮断するためのマスクがないと耐えられず、満員電車や人ごみに怯え、立っていられない日々。マタニティマークを見て席をゆずってくれる人も居て、それはほんとに涙が出るほどうれしかった。

あのですね。つわりってだいたい2ヶ月あたりからはじまるんです。でも、外見的にはお腹も出ていないし、全然妊婦に見えないんですよね。でもでも!その時期は!!ほんとにツライんです!!!
だから、スリムなのに(お腹が出ていないのに)マタニティマークをつけている人を見たら、ぜひ席をゆずってあげてほしい。優先席じゃなくても。あ、お腹出ててもゆずってほしいけど。

ちなみにマタニティマークなんですけど、駅でくださいって言えばもらえます。母子手帳など見せずとも、あっさりと。「それじゃあマタニティ詐欺できちゃうじゃん!」という旦那さんの反応もありましたが(=妊娠してなくても席を譲ってもらえる詐欺ができるじゃん!って事?)、あまりにも簡単で拍子抜け。最初はつけることに抵抗がありますが、次第にありがたみがわかってきます。


と、ここまで長々と書いてみましたが、面白いのかなこれ?と常に不安をもってキーを叩いております。
先日旦那さんに「時間が経つと色々忘れちゃうでしょ。だから忘れないようにブログに書いておくことにしたんだ」と話したのですが、「ふ〜ん。でも、忘れることのなにがいけないの?」という、禅問答のような返しをいただきました。天才かよ。

いや、うん。いけなくないけどね?全然。


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