つわり処女の私は、日に日に悪化していく自分の状態に恐怖心しか抱けないまま、モロッコより帰国の翌日、5月10日。クリニックへ行ったのですが。
またこのクリニックが基本予約制じゃないため、人が殺到してもんのすごい待つんですね。3時間とか当たり前で、5時間くらい待つことも。それで診療が5分もかからないんだから、参ってしまいます。
病院の待ち合い時間って、私は本来あんまり嫌いじゃなくて。ぼーっと本読んだり、なんか飲んだり、なんか書いたりして快適に過ごすほうなのですが、今回ばかりは。
読めない、飲めない、書けない。なんもできない。
しかも、待合室は女性だらけで、もう香水やらシャンプーやらのにおいが充満してる。
めまい、立ちくらみ、吐き気の協奏曲が鳴り止まないなかでの数時間って地獄でしかなくて。朦朧としながら、向かいに座ってる臨月くらいの女性のお腹が、内側からボコッ!ボコッ!って激しく盛り上がってる(赤ちゃんが蹴っているため)のを「これはこの世の出来事なの…?」みたいな感じで見ていました。妊婦コワイ。
ここの先生(女性)はほんとにきゅうりの浅漬けみたいにあっさりしていて、かつ竹を割ったようにスパーンと話す。終始笑顔で、余計なことをまったく言わない。この日も、内診をささっとすませたら「はい、心拍確認できました。じゃ、母子手帳をもらってきてください。それからこのクリニック、検診はできますが出産はできませんから次回の診療までに産む場所を決めてきてくださいね。紹介状を書きますので」と、まるでそうめんをつるつるとすするような滑り具合で一気に話してきた。けど、今の台詞のなかに結構いくつか重要な単語含まれてないですか?っていう。
つたない私の脳内で復習すると、以下のようなことなのだった。
A: 心拍が確認できた=赤ちゃんは生きてる。(まぁこれだけつわってるんだからそりゃそうでしょうね)
B: 母子手帳をもらう必要がある。(フムフム。そんなものがあるのか。役所などでもらうのかしら?)
C: 産む病院を次回までに決めてこい。(ええーーっ!もう決めないといけないの?)
(この間3秒)
「じゃ、次回また来てくださいね〜」とクロージング体勢に入ろうとする先生をむんずと掴み「あの、産む病院ってもう決めなければならないんですか?どうやって決めたらいいのでしょうか?おすすめとかありますか?」と居酒屋の最初の注文みたいな質問をしてしまった。
すると先生曰く「おすすめというのは特にありません。里帰り出産なのか自宅のそばで産むのかにもよりますし、出産方法で選ぶ、予算で選ぶなど色々ありますよね。ネットで調べれば情報が出てきますよ。ちなみに三宿の自衛隊病院は料金が安いので大変人気があります。あなたの場合12月末が出産予定だから今連絡しても予約とれるかどうかギリギリってところかな〜」とのこと。優しいのか冷たいのかよくわからないアドバイスを受け、なんとなく打ちひしがれて帰路につきました。
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さて、2週間後の検診までに出産する病院を決めなければいけない。
これって、結構なプレッシャーです。昨日モロッコから帰ってきたばかりだよ?
さらに、当時の私はモニタを見ると数分で吐き気を催すため、ネットで調べるということが限りなく億劫なのであり、また、いちばんの問題は、
こういう出産方法にこだわりたい!とか、この病院で産みたい!みたいなのが皆無なのです。
というか、どんな出産方法/病院があるかという知識がそもそもゼロに等しい。つくづく私は妊娠・出産ということについてまったくもって具体的なヴィジョンを持っていなかったんだなとしみじみするのでした。やや、大変な世界に足を踏み入れましたぞ?みたいな。
唯一はっきりしていたのは、実家で産むというイメージはまったくないということ。自宅付近で探そうというところまでは決まった。さあ、インターネットのお世話になりますよ。
程なくして、私は「無痛分娩しかない」と思うようになっていました。というのが、しつこいようなんだけど、そのとき壮絶なつわりだったんですよね。しかも「これからどんどん酷くなる」ということへの恐怖感。それから「仕事に支障が出る」ことへの恐怖感。これらに苛まれながらの検索だったため、妊娠・出産を楽しむみたいな、どれだけ知らない世界か見てやろうじゃないの、みたいなチャレンジ精神?好奇心っていうんですかね?そういうの皆無。余裕ゼロ。女性に産まれたからには云々、お腹を傷めてこその云々、生命の神秘を云々、みたいなの全然響かなくて。笑っちゃいますよねー。ハハハ。
いや、だってネットを見れば見るほど、38歳での出産ってほんとに大変で、体力も取られるし復帰にありえないほど時間がかかる、っていうか言っとくけどマジで38って超高齢出産だからね?産むことじたいが割と不自然なことと自覚してくださいね?みたいなのしか出てこなくて、もう半泣きですよ。40代でも出産は全然いけると思っていた(というか、2014年9月の今現在も思っています)のに、ネット社会の容赦なさ。今思えば、たまたまそういうサイトに当たってただけなのかもしれないけど。
そう、7ヶ月を迎えてつわりも終了している今となっては。当時より少しだけ精神的にも余裕があって、自然分娩のすばらしさとか、アーユルヴェーダの考えをベースにした産院とか、そういうものにキラキラと目を向けられるようになったけど。当時はもう、とにかくしんどい、楽になりたいが先にたっていて、少しくらいお金がかかろうといい、快適なお産を望みます!って感じで。何が快適かというのはまた難しい問題なのだけども、そこまでは考えられなかったですね余裕なくて。
つーか、私にMの気はないと思った。今回のことを通して。SかどうかはわからないがMでは絶対にない。どうでもいいですね。
で、無痛分娩を行っている病院って決して多くはなくて、そのうちでいちばん通いやすいところをチェック。サイトもなかなかちゃんとしていて、分娩予約状況なんて気軽に見てみたら、もう12月上旬まで埋まっているではないですか!は、はええ。脊髄反射で速攻電話して12月下旬のほうの予約をとり(これもあと2名とかだった)、あっさり出産する病院が決まってしまった。「次回から検診はうちで行ってくださいね」とのことで、竹を割ったような先生とはあと1回、紹介状を書いてもらったらお別れ。でも、出産する病院で定期検診というのはやっぱり安心だよね。
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出産方法について。
いろんな意見がありますが、主には自然分娩、和痛分娩、無痛分娩、帝王切開の4種類なのかな。
で、自然分娩にはそれはそれは色々なスタイルがある。水中出産や、フリースタイル出産(自由な体勢で出産する)などなど。今思えば(今思ってばっかりだけど)、ナチュラルでスピリチュアルな方法を選びたい気持ちもゼロではないんですが、私は100%そちらの人間ではないという自覚もあって。
例えばコスメの話。
私はオーガニックコスメが大好きです。でも、例えばTOM FORDの口紅大好きだし、CHANELやNARSのカラークリエイションには感動しかない。今後のDiorにも超期待してる。メイベリンのマスカラやアイライナーをこよなく愛してるし、アルビオンの乳液&スキコン信者だし、っていう。
オーガニック大好きな人のなかには、ケミカルは一切NO!って人もいて。それはそれで全然否定しない。けど、私はすべてを理解したうえでどっちも愛してる人になりたい。というのがあります。
そういう自分を好きになりたいから。なのだと思う。
結局はエゴイストなのだと思う。
一見相反するもの、メジャーとインディーズとか、ナチュラルとケミカルとか、文系と理系とか、そのどっちかに100%行けない。特定のものに傾倒できない。相反するものの良さも見えてしまうし、どっちも好きじゃだめなの?って思ってしまう、だからこそ「かぐや姫」の感想がこうなってしまうのですが。
そういう自分に悩んだ時期もあったけど、今はこれでいいと思えるようになった(高齢出産のいいところは、精神的な余裕だとなにかに書いてあって、それは一理あるなと思います。もちろん自分比だけど)。
大切なのは、その人にとって何が心地よいのか、なのではないかと思う。衣食住、どんなことであっても。振り返り、見直して、丁寧にチューニングしながら軸を育てていく、そういう生きかたがいいなと思います。
って、話が逸れましたが、私は、つわりでしんどかったあのときの自分をいたわる意味でも、そして合理的な21世紀に生きる38歳の、ひとりの弱い女性として、今も無痛分娩を選んでいる、ということでした。
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ちなみに母子手帳の話。
母子手帳は市町村の役場(出張所などでも)で交付してもらえます。「心拍が確認できたらもらうもの」という説があるようですが、妊娠が発覚した時点でもらえるみたいです。母子手帳をもらうのは早いに越したことはありません!なぜなら、診療代がディスカウントされる妊婦健康診査受診票が一緒にもらえるからです。病院によると思いますが、私の場合、初期の診療代はディスカウントなしだと1回につき6,000〜9,000円(血液検査などはなし)かかりました。結構高いんですよね。
ただ、あまり早く母子手帳をもらうと、流産したときに見るのが辛いといったお話もあるとか……。そういう意味で「心拍が確認できたら」ということになっているのかもしれません。
あ、えーと、今回は、旦那さんのエピソードは特になしで。
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知らんうちに撮られてたのですが先月出産に備え髪を切りました。 |
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