9.10.14

出生前診断、私の場合



※出生前診断とそれにまつわる色々なことについては、本当に色々な意見があり、これが正解というものはないと私は思っています。また、どんな運命も受け入れてしかるべきと思っていますし、困難に立ち向かいひたむきに生きる世の母親の皆様に対し、私は心底リスペクトの気持ちしかありません(また、どんな命も尊いものだと思っています、これは本当に強く)。現在産後6ヶ月を迎え、この診断を受けようと決めたときにはわからなかったことが多少わかるようになったこともあります。しかしながら私はあくまでも自分の経験からしか物事をみることしかできず、そういう意味では今であれ当時であれ未熟で幼稚です。下記の文章には、面白おかしく、、というと語弊があるかもしれませんが、フランクに書かないと本人(私)が乗り切れない壁のようなものがあったため(これはこのブログ全体に言えることですが)失礼な表現とみられる部分があり、読んで不快な気分になるかたもいらっしゃると思います。ブログを消すことも考えたのですが、未熟なひとりの人間の記録として残しています。(2015/7/20)




産むと決めた病院での最初の検診のとき(6月5日、10週3日目)。
1枚のプリントを渡されました。
「35歳以上だから、ご説明しておきますね」とのことで、要するに出生前診断のご案内でした。

もう今ではあまりおぼえていないのですが、そのとき私はまだ出生前診断のことを知らなかったのではないかな。これはいわゆる胎児の染色体異常を事前にテストする方法なのですが、いくつか種類と段階がある。お金もかかります。「高齢出産だとダウン症の子どもが産まれる確率が高い」という話は聞いたことあったけど、そんなこと言われてもどうしたらいいか、程度だった私には、何が何やらの内容でした。

プリントの内容、及び医師からの説明は(今にして思えばおそらく)以下のような感じ。

35歳以上で初産の場合、染色体異常の胎児が産まれる可能性が高くなるが、事前に異常を知るテストを行うことができる。
・まず母体の血液を採取し「クアトロテスト」なるものを行う。流産などのリスクはないが、これでは異常の「確率」しか出ない。結果は1/50とか、1/2500とか、1/30000といった数値となり、0も100も出ることはない。
・クアトロテストの確率が高いと判断された場合、「羊水検査を行う必要がある。
・羊水検査の結果はほぼ正確だが、子宮に針を刺して羊水を10〜15cc抜き取る検査のため(要はお腹に針を刺して羊水を吸い取る)、針が胎児に当たる、羊水が漏れる、流産するなどのリスクがある(確率は低い)
・クアトロテストは15週より受けられる。費用21,000円。
・羊水検査は16〜17週で受けなければならない。費用130,000円(!)。
・また、この流れとは別に、昨年より始まった「NIPT」という検査方法がある。これは母体の血液検査なので流産などのリスクなし。実施している病院が都内でも数えるほどしかなく、この病院では受けられないので紹介制の外来となる。10週より受けることができる。費用210,000円(!!!)。
・これら出生前診断は必ず受けなければいけないものではありません。ただ35歳以上になると、羊水検査のリスクよりも染色体異常のリスクのほうが確率が上がることから、無事健康体の赤ちゃんを出産する確率統計で考えると診断するという選択もある、というだけです。
・詳しくはネットで検索してみると色々出てきますから。(←またコレかよ!)
・ま、どうするかは旦那さんやご家族ともよく話し合って決めてください。


……………。
いや、こんなこと一気に言われてもですね、全然理解できないですよ予備知識ないと。私の足りない頭じゃ。かろうじて理解できたのは、診断、受ける?受けない?ってのを決断せねばならんということ。んでそれはかなり重いことなんで、ひとりで決めんなよと。それが精一杯でしたね。


結局、この手の診断の何が問題って「染色体異常の可能性が明確になったそのとき、あなたはどーすんの?」という一点に尽きると思うんですな。砕けた言いかたすると、胎児が健常者じゃないとわかったらどーすんの?産むの?堕ろすの?ってことなんですな。

これはほんとにほんとにマジでデリケートな問題でして(妊娠関係、そんな問題ばかりだが)、人の数だけ考えかたがあるというか、これが正解っていうのははっきり言ってないと私は思っている。今でも。モラルとか倫理観みたいなものにかかわる問題だし、だからこそお医者さんも「別にすすめてるわけじゃないけど35歳以上だから一応アナウンスしときます。や、でも別にすすめてるわけじゃなくてですね」みたいな歯切れの悪い説明をするってもんです。

帰ってから改めてネットで色々調べてみてわかったのは、出生前診断で明らかになるのは先天的な異常のなかでも一部らしく、その主たるものがダウン症なのだけど、たとえば自閉症なんかは産まれてみないとわからないということ。
それから、今の私の年齢って改めて微妙なんだなということ。ダウン症の子が産まれる確率、リアルすぎるでしょこれ、みたいな(今思えばそれでも1/175でしょ?って話だし、20代でダウン症の出産も全然あり得るし、なんでも高齢出産のせいにすんなって感じなのですが、この頃はマジでメンタル弱ってました)。


その日の夜、旦那さんにこの話をしたのですが、彼の第一声は「検査費が高すぎる」でした。ま、保険きかないからね。
で、その後ふたりで話し合いました。「NIPTってやつは高額すぎるから論外として、クアトロテストだけ受けても確率しか出なくてモヤモヤするから結局羊水検査を受けることになるでしょ。検査するだけで母体と胎児に対するリスクもあるし、それで異常がわかったらどうするのかって話だよね」みたいな感じで。
結論としては「事前にわかる異常もあれば、産んでからわかる異常もあって、健康体だとしても交通事故なんかに合ってしまう可能性もあるわけだし、そーゆーのはもうキリがないから、お金もかかるし検査はやめよう。どんな子でも可愛がって育てよう」というものだった。そうだねそうだね、と言い合って、なんとなく慰められた気がして、その日は眠りについた。


そういった結論が出たはずなのだけど。
私はその後も数日間、ネットでの検索をやめなかった。「ダウン症 育てかた」「染色体異常 確率」とかそんなのばっかり。それで「子どもはみんな親を選んでやってきてくれている」とか「ダウン症の子は天使って言われています。とてもおだやかだし、芸術的才能が豊かな場合が多いんです」みたいな記述や、あるいは「出生前診断なんて人のいのちを何だと思っているの?」「親の都合で生命をコントロールしようとするなんて信じられない」みたいな批判の意見など、うむうむ、なるほど、そうだよなぁ、と読みふけるのを止められなかった。なぜか、やめられなかった。

そしてある日。先輩の女性と出生前診断のことを話す機会があった。彼女は残念ながら子どもを授かることはなかったが、もし妊娠したら必ず出生前診断を受けると決めてたよ、とキッパリ朗らかに言い放った。
「え、なんでですか」と訊いたら「私は仕事でどうしてもやりたいことがあったから、染色体異常の子を育てるのは絶対に無理なんだよね。実際周りに育てている人がいるけど、確実に子ども中心の生活になるし、仕事はとてもじゃないけどできないのを見てきていたから」と。「きれいごとじゃないんだよ、やっぱり」とも。更に「受けるなら絶対最新のNIPTでしょ!こういうのは何事も最新がいいよ!え?高い?何言ってんの!お金なんて稼げばいいんだから!」と言われて。

それを聞いて、自分のなかのパズルみたいなものがカチッとハマったというか、目盛りがピタッと合ったというか。「あ、そうか」とすごく腑に落ちて。

5秒後くらいには「あ、私、NIPT受けよう」っていう結論が脳内を占領していて。
それは揺るぎない大陸のような安定感ある結論で。

脳内で、色々な細かいシフトチェンジが行われました。
まず「もし染色体異常だとしたら、産んでからわかるより、事前にわかってたほうがいいに決まってないか?」ということ。産まない、という極論ではなく、産むとしたって準備もできるし、何もしないで産むほうが無責任じゃないか?ということ。知る手だてが用意されているんだから、それは知ることを選んでなんぼだろ、ということ。
それから「やっぱり、きれいごとじゃないんだ」ということ。
そして何より「高額、ということだけが理由でNIPTを選択肢から除外していたんだ」という事実……。
21万、高額だけど、稼げない金額じゃない。決して。

以上、あくまで私の考えに過ぎないですが、こういったカードが出揃って、私の頭のなかはすごくクリアになり、前には1本の道ができていたのです。

帰って旦那さんに相談(というか報告)すると「そだねー事前に知ることは確かに大事かもー」みたいな軽やかなお返事。ベースに「どっちかというと俺より彩奈(私です)の問題だもんねー」みたいな意識があるのは否めないが、こーゆーとき軽やかな人ってほんと助かるよ。ごはんも作ってくれるしね。

そしてそんな旦那さんに感謝するとともに、結局染色体異常のリスクは私についてまわる問題なのであって(精子はあまり問題ではないらしいのと、そもそも旦那さんは35歳未満)、私がすごい責任というか、負い目みたいなものを感じてたんだなということに気づくのでありました。


とゆーわけでNIPTについては長くなるんで次回に続きます。

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