25.10.14

NIPT、私の場合


※出生前診断とそれにまつわる色々なことについては、本当に色々な意見があり、これが正解というものはないと私は思っています。また、どんな運命も受け入れてしかるべきと思っていますし、困難に立ち向かいひたむきに生きる世の母親の皆様に対し、私は心底リスペクトの気持ちしかありません(また、どんな命も尊いものだと思っています、これは本当に強く)。現在産後6ヶ月を迎え、この診断を受けようと決めたときにはわからなかったことが多少わかるようになったこともあります。しかしながら私はあくまでも自分の経験からしか物事をみることしかできず、そういう意味では今であれ当時であれ未熟で幼稚です。下記の文章には、面白おかしく、、というと語弊があるかもしれませんが、フランクに書かないと本人(私)が乗り切れない壁のようなものがあったため(これはこのブログ全体に言えることですが)失礼な表現とみられる部分があり、読んで不快な気分になるかたもいらっしゃると思います。ブログを消すことも考えたのですが、未熟なひとりの人間の記録として残しています。(2015/7/20)




前回の続きです。

NIPTを受けようと決めてから、とりあえずネットで色々調べてみました。
まずわかったのは、この検査、超人気だということ。

・採血だけなので、母体や胎児に対するリスクがない
・実施している病院が少ない

この2点から人気(っていうかつまり競争が激しい)なのだと思われるのですが、NIPTで検索して行き当たった個人ブログなんか読んでも、だいたいが予約とるまで一苦労。2週間チャレンジしてるけど取れないとか、そもそも電話が繋がらないとか、無理やりねじ込んでもらってようやく取れたとか、そんなのばっかりで。いかに激戦な検査なのかっていうのが。ハイ。
こんなにお金のかかる検査なのに、みんなすごいよね(しつこいようだけど21万だよ?)。しかも35歳以上じゃないと基本受けられないのだが。

激戦ブログを見るほどに、自分は大丈夫なのか?と焦ってきて、翌朝さっそく「先週の検診で紹介されたNIPTを受けたいのですが」と病院に電話。すると、驚愕の事実がざっくざっくと判明。

10週から受けられるが、14週までに受けなければならない(この時点で既に11週に入っていた)。
・実施している病院じたい非常に少ないが、個人予約を受け付けているところはほぼなく、提携病院からの紹介制をとっているところがほとんど。希望するならこちらの産院から提携先の病院(成育医療センター)に希望の旨を伝えるが、予約が取れるかは混雑状況によってなんとも言えない。さらに、提携先の病院への連絡は、週一回、月曜日と決まっている(この時点でこの週の月曜日は終了していた)。
・運良く取れた場合、日程は翌週の火曜13:00となり、これは動かせない。さらに、必ず夫婦揃って行かなければならない

えーとつまり?
私はあと2回しか予約のチャンスがない。
受ける病院も成育医療センターしか選択肢がない。
運良く予約が取れたら翌週の火曜13時の予定を何がなんでも空けなければならない(しかも夫婦で)。

って、すごい狭き門じゃない?っていうかはっきり言って無理なんじゃないの?と気持ちはダークになるばかり。そもそもこの病院への電話だって、いわゆる仕事中の時間帯にかけさせていただいているんですよ?私はフリーランスだからいいけど(いや、全然よくないというか、クライアント先に調整のお願いはしないといけないのだけれども)、たとえば会社員で、結構責任あるポストだったりして、出張入ったり、抜けられない会議が火曜にかぶったりする人って、上記の条件全部クリアするの神業に近くね?
このときはつわりも絶好調だったため、いったいなんでこう次から次へと高い壁が立ちはだかるのだろう高齢出産ってやつは……と世界の終わりのようなテンションになってました。

どんよりとした気分を抱えたまま、旦那さんにとりあえず連絡して概要を説明すると「わかった〜。こっちの予定はなんとかなるようにしとくよ〜」と天使のようなお返事。よく考えたら彼もフリーランスなのであった。が、この軽やかさ、マジでありがたい。私がもし逆の立場だったら「え〜!直前までわからないなんて、そんなの困るよ」とかボヤいたりしてる気がする。なんていい人なんだ。

程なくして翌週月曜。病院から電話があり「NIPTの予約、申し込むことができました」とのこと。なんとあっさり拍子抜け、ってな気分と、とにかくよかったってな安堵の気分がマーブル模様になり、クライアント先と旦那さんに連絡。いよいよ624日、NIPTを受けることになったのだった。


NIPTは母体の血液を採取して、それをアメリカのサンディエゴにある検査機関に送り検査するというシンプルなプロセスなのだけれども、そのシンプルさ故に、検査の意義や結果の解釈についてじゅうぶんに認識しない状態で気軽に受けてしまう危険性がある、とされていて(要するに重い検査なんだから気軽な気持ちで受けんなよという)、検査の前に必ず夫婦揃って「遺伝カウンセリング」なるものを受けることが義務付けられています。
これは「NIPTってこういう検査ですよ?ほんとにわかってる?」ってことと「結果がわかったらあんたらはどーすんのよ?」ってところをクリアにするための対面カウンセリングでありまして、大変にシリアスな雰囲気のなかで行われます(当たり前だけど)。

そこでは、このpdfの内容を主に説明されます。
ので、ご興味のあるかたはぜひご一読を。わかりやすくまとまってます。

なのだけど、特筆すべきは、結局NIPTだろうと羊水検査だろうと、先天性疾患のごく一部しかわからないということ。先天性疾患のうち、染色体疾患はたった25%であり、そのうちのさらに70%くらいしかわからないわけですね。これが13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(いわゆるダウン症)という3種の染色体疾患なのだけど、このうち1318は寿命1年以内が殆どで、50歳以上まで生きられるのはほぼ21だけ。ということでした。

また、NIPTはあくまで非確定検査なので、陰性と出てもその信憑性は99.9%100ではありません、ということも念を押されました。陽性である可能性はゼロじゃない、というリスクヘッジも忘れない。

また、産院の先生も出生前診断について説明するとき同じテンションでしたが、「私たちは決して出生前診断を積極的に勧めているわけではなく、むしろその逆なんですよ」的な温度感が漏れ出ていて。
結局、疾患の一部しか知れないし、その結果も100%じゃないし、不安は解消されないですよ、またもし陽性だった場合に羊水検査に進んでいただきますが、そこで異常が判明したらどうするか、きちんと決めておいてください、ただ異常を持って産まれた子を可愛がって、果敢に育てているかたは本当にたくさんいらっしゃいます、そのご案内もいつでもさせていただきますので、と、本当になんというか、そう言うしかないし、どんなことがあってもこちらとしては受け入れますのでご心配なさらないでください、としか思えませんでしたね。本当に難しい問題だと思います。


さて、採血をしてから2週間後、結果を聞きに再度病院へ(また夫婦揃ってでないといけない)


結果は陰性でした。


この結果を聞いてはじめて、なんというか、私はようやく「あ、自分が妊婦って思っていいんだ、堂々と妊婦を名乗っていいんだ」っていう……、資格を得た心持ちというか、とにかく何か、心身が本当に緩みました。この時点で15週。まだまだ安定期とは言えない時期だし、何が起こるかわからないのだけれども、それでもすごく安心しました。我が子に染色体疾患が見られなかったという安心より、こういうことを書いていいのかわかりませんけれども、自分の子どもを自覚的に殺す可能性はゼロになった……、というのが、本当に正直な気持ちで。

もちろん若くしてダウン症の子を出産して育てている人もいるわけで、なんでも高齢出産のせいにしてはいけないのだけど、やっぱり高齢出産だからこそ向けられる目というのがあるし、また当人(私)もそれに必要以上に敏感になってしまいがちで。それが近い人だったりすると尚更で。そこに対して胸を張ることができるというか、ようやく、妊婦としてスタート地点に立てました、これからよろしくお願いします、みたいな気持ちになったというか。

正直この検査結果が出るまで、マタニティウェアとか、子どもについてのあらゆること……性別だったり、名前だったり、ベビー服のことだったり、そういうことについて一切、リアルに考えられなかった、考えることができませんでした。目を背けねばならない、と思っていたというか。そんな資格を与えられてないという意識が強くて。とても怖く、どんよりと、身の置き場のない、ほんとに霧の中を歩いているような日々でした、それまで。

この結果を聞いたその瞬間から人生がバラ色になったとかそういうことではないんですけど、とにかく、ああようやく受験票をもらえたなぁみたいな。第二幕はじまったな、みたいな感じでしょうか。

このときの心境は忘れないと思う。とか言っても人間は忘れてしまう生きものだから、こうしてここに記しておきます。そんなこともあったね、あったっけ?くらいの出来事になる日はきっと来る。でも、このときの私は本当に、いっぱいいっぱいの自分自身で、安心していたのです。自分が自分として立っていられることに。



ちなみに、NIPTは受ける病院によって費用が異なるらしいです。私が言われていたのは成育医療センター価格だけど、もっと高いところも、安いところもあるみたい(山王病院なんかはかなり高いみたい)。夫婦同伴もマストじゃないところもあるようで、病院によっていろいろのようです。まだ始まったばかりの研究なので、これからどんどん変わっていくだろうし、検査費も安くなっていくのではないでしょうか(なってほしい)。

受けた方がいい、とは言わないです。人それぞれだから。
でも、私は受けてよかったと思っています。


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