27.12.15

帰ることのできる場所



3月に40歳になります。

さて、いつでも帰ることのできる家のようなものがあると自由に羽ばたける、のでしょうか? 家庭の話ではなくて…、嗜好の話。私の大好きな世界というものがあって、それがおもちゃ箱みたいなものだとしたら、箱のサイズは伸縮自在でおもちゃは増えていく(し減っていく)のだけど全体のテイストは変わらず。みたいな。そういうものがあると、その箱にはそぐわないものに関しても、いいよね〜なんて俯瞰的コメントができてしまったりする。そんな気がする。

私にとっての、いつでも帰ることのできる場所。
そこにあるのは、こんな風景とこんな香りだ。きっと。


Juergen Tellerは、私が大学時代に熱狂的に好きになった写真家だ。今でももちろん好きだけど、彼がファッション写真を撮っていた頃というか、いや今でも撮っているけど、一度ファッション写真に嫌気が差すよりもっと前の、Venetia Scottを愛していた頃の、要するに90年代半ばくらいまでの彼の写真に心から惚れ込んでいた。天国がこんな場所だったらいいのに、なんて思っていたっけ。硬くて乾いた骨子に、ゼリーのようなオブラートのような、薄い膜がはってある、この感じ。乾いてるものが好きだけど、この薄い膜が大事なのよ。それは何の感情も伴わないけれどもどこかあたたかい涙、のようなものかもしれない。

この写真集は擦り切れるくらいまで見ていて、私には珍しく、カバーに記憶のない切り傷が入ったりしている。今改めて開いてみると、そこにある写真が「モニタと無縁である」ということを突きつけられると同時に、あ〜やっぱり私の原点はここだよなと感慨にふける。この世界があるから、私は「沢尻エリカもかわいいよね」なんてセリフが言えるのだ。


Comme des Garconsの香水をはじめて嗅いだとき、こういう香りを香水として楽しむことが許されるのか、と衝撃を受けた。のを今でも覚えている。発売は94年、場所は横浜のそごうだった。ということは、バイトに行く前の時間だったのかな。それまで私が好きだな〜と思っていたのはインドのお香のにおい。それもサンダルウッドが大好きだった(今思うとそれを模倣した香料でできていただろうけど)。それなのに、世の女性が好むのはサラの香リだとか、せっけんの香りだとか、花束の香りだとか、フルーツの香りだとかそんなのばっかりで、私はもう、女の子として生きていくのは難しいのかな、なんて思っていた。なんというか、かわいらしい女の子としてね。

そんな私を、カルダモン、シナモン、ナツメグ、クローブ、ペッパー、サンダルウッド、フランキンセンス、アンバー、ラブダナム、シダーウッド…etc,etc……、のあわさった、夢のような香りが救ってくれた。しかもクリエイションの頂点である(当時の私にとってはそうだった)Comme des Garconsが提案する香りだなんて、と浮かれた。自分の存在を許されたような心持ちだったと思う。10年くらいはこの香り一筋で、次第に他のものも使うようになるんだけど、選ぶものには統一性があって、その原点にはこの香りがある。ここ最近はいつのまにか家のラインナップから姿を消していたけれど、改めて使ってみると、幽体離脱してどっかに浮遊していた私の魂が、ふわっと自分の体内に戻ってきた感じ?この香りがあるから、今はあんなに苦手だったパウダリーフローラルや、バニラのようなオリエンタルスイート、そして実はネーミングが結構謎な「せっけんの香り」までなんでも楽しめる。

そう、だから自分にとってのスタンダードを持つっていうのは、生きやすくなる術だと、私は思う。40歳を目前に、まだまだ新しい世界が見たい。そう清々しく思えるのは、「いつでも帰ることのできる家のようなもの(嗜好)がある」ということが大きいのではないか。矛盾しているようですが、そこに自分なりのバランスがあるんですね。



ちなみにTASCHENはお金のない学生にもやさしい出版社だったよね。ネットなんてなかった時代に、ほんとうにいろいろなものを見せてくれて感謝しています。

11.9.15

veludoのビロードオイル

veludo「ビロードオイル」30mL ¥4,800 [税抜]


●頭皮だけにフォーカスしたオイルは以外と存在しない


「超人」という言葉から、思い浮かぶひとが何人かいる。
AMATAの美香さんは、間違いなくそのひとり。サロンオーナー、ビューティプロデューサー、イラストレーターなど様々な肩書きを持ち、超多忙なのに細やかな気遣いを忘れない本当に素晴らしいひと。こんなひとがこの世に存在すること自体が奇跡のような気がする(超人とはそういうものですが)。お会いするとありがた過ぎて、思わず手を合わせそうになってしまう。

美香さんのスゴさを知りたかったら、ぜひ南青山のサロンAMATAへ足を運んでみてください。彼女のスピリットがすみずみまで行き届いたその空間は、ホスピタリティの塊。飾られている花から鏡の角度にまで、とにかく日常の喧騒を離れ、ゆっくりと過ごしてほしいという願いが込められている。人気サロンにありがちな「待ち時間」が、AMATAにはほぼありません。動線やタイムスケジュールが完全にコントロールされていて、ゲストにストレスをかけない配慮がなされている。だから、心地よい緊張感のある空間で、どこまでもリラックスできてしまう。

veludoは、そんな美香さんがプロデュースするブランド。都会のアーユルヴェーダをテーマに、感度の高い女性も唸る製品をリリースしているのですが、このたび頭皮用のオイル「ビロードオイル」がローンチ。これが、本当にものすごいのです。

毛髪診断士でもある美香さんは、巷にあるオーガニック・ナチュラル系の美容オイルに対して、「顔にもボディにも頭皮にも」といったオールインワン機能のものは数あれど、頭皮専用のものが見当たらないことに対して常々不思議に思っていたそうで。ならば作ろう、と。
そこは美香さん、中途半端なものは作りません。アーユルヴェーダアドバイザーでもある彼女は(って一体いくつの肩書きが!?28種もの成分をブレンド。化粧品の成分は種類が多ければいいわけでは決してないですが、紫ウコンとか、ニームとか、カレーリーフとか、アーユルヴェーダ好きなら思わずニンマリしてしまうものや、月桃、ヒノキ、ブラッククミンやスピルリナ、マヌカなど、どこから探してきたんですか? って感じのものばかりがズラリなのです。もはやオタクの作品ですこれは。

●頭皮をオイルでマッサージする理由


シャンプー前にオイルで頭皮をマッサージするって、結構面倒ではないですか。しかも15分くらい置いてからシャンプーしなければいけない。そんな余裕はないのよと思ってしまう。

でも、一度騙されたと思ってこのオイルを使ってみてほしい。アイデアが無限に湧き出るのでは? っていうくらいのクリアな、しんとしたマインド状態になれます。メントールによるスカーッ!とした爽快感も捨てがたいけれど、これはもっと、心に響くようなクリア感。体験するとヤミツキになります。

オイル使ったあと、シャンプーちゃんと泡立つの? ベタベタしない? そんな心配も無用で、なめらかに泡立ちます。さらにブロー後は、マッサージのとき以上の軽い感覚。熟睡後の目覚めみたいな爽快感が気持ちよすぎる。さらに、髪がふんわりとなめらかなことにも驚きます。総じて、サロンでヘッドスパとトリートメントを受けてきたかのような状態になれる。だから、シャンプー前の一手間を惜しむのは、あまりにももったいないのです。

ちなみに、頭皮はかなり皮脂腺が多く、毛穴に汚れもたまりやすい。シャンプーではどうしてもきれいにするのに限界があるので、粒子の細かいオイルを使うことですっきりします。

●こんな人におすすめ


あらゆるひとにおすすめですが、以下該当者は特に。

・デスクワークが多い
・睡眠が足りていない
・頭を使いっぱなしのハードワーカー
・最近サロンに行けてない
・髪がごわつく、パサつく
・頭皮が乾燥している/油っぽい(水分・油分バランスが乱れている)
・ブロー、スタイリングが決まらない
・最近髪が細くなってきた
・スカルプケアに興味がある、はじめてみたい


私は現在産後8ヶ月、抜け毛もひと段落しまして、新しく生えてきた毛を健康的に伸ばすかつ、頭皮環境を整えるというタームに入っています。(産後の抜け毛についてはまたいつか書きます)そんなときのアイテムとしてもぴったりです。最近思考がまとまらないとか、なんか冴えないみたいな人にもおすすめしたい。もちろん男性にも! 気持ち良さに唸ることうけあいです。


こっちにも書きました。

15.8.15

仕事復帰、私の場合

お風呂大好き




気づけば我が子は7ヶ月を迎えておりました。
って、ほんとに気づいたらその日を過ぎていまして、私は割と恋人の誕生日とかも忘れてしまうタイプではあるんですが、なんか申し訳ない気持ちで一杯です。ごめんよ。ありがたいことに息子は元気で生きております。

産後の仕事復帰について書こうとずっと思っていて、こんなに経ってしまいました。今回をもって、このブログに妊娠出産のことを記すのはひとまず終了にしようと思っています。「産後の身体、私の場合」にもさらなる続編あるんですが(特に激しい抜け毛の後の辛い髪型についてとか)、まぁ人それぞれってことで省略します。しかし、こんな髪型の私が言うのもなんですが、産後のあらゆる辛い症状は、いずれ必ず終焉を迎えます!ね!生きてればこそだ!

(そして育児ブログは特に書く気ありません。アプローチ難しすぎるのでねー。私の分野ではないかなと思っています、ハイ。)


と、本題です。産後はいつから仕事復帰できるのか。妊娠中、いつも私が思っていたのはこのことでした。結局、妊娠がわかったときも、出産するときも、産んだ後でさえ、私にとっていちばんの心配事は「どれだけ仕事に影響するか」ってことなんですよね。冷静になると、これは女として悲しすぎることなのではないでしょうか?といつも自分に対して疑惑の目を向ける脳内ポイズンベリー(読んだことない)状態に陥るのですが、これが私なんだよなーというもう一人の脳内ポイズン(以下略)。仕事復帰を1日でも早く!って思っていたけど、産んだその瞬間から子どもが可愛すぎて復帰できなくて今に至る、みたいな友人もいて「アヤナちゃんもぜったいそうなるよ!」って言われていて、ちょっとは期待していたんですけど、いや、マジで1ミリもならなかったですね。何度も書いていますけど我が子への無償の愛みたいなの生まれなかったです、本当に残念です。とはいえ今現在、出産前とか、出産後すぐとかに比べると、ある程度子どもとの関係性にも慣れてきて、なんか友達のような、同居人のようなそんな感じですかね。なう。なうなう。

で、産後の仕事復帰。まずいろいろな条件がフリーランスと会社員で大きく異なります。私はフリーランスなのですが、比べてしまうと会社員で出産したほうが断然オトクといいますか。会社員はまず産休・育休がある。その間は普通にお給料の何割かのお金をいただけたり、補助金なども出たりしますが、フリーランスは人生すべてが歩合制のため、そういったサービスは基本まったくもってありません(健康保険加入者に対する出産育児一時金は出ます)。もちろん、会社員の場合は厚生年金とか、給料から天引きされてきたものがなんとなくあてがわれている仕組みになっているのはわかるのですが。私は13年くらい会社員だったため、なんか余計に悔しいというか、そのとき産んでおけば見える景色も違ったでしょうなぁ……とは思います。基本的にフリーランスって保証がない。でも会社員はそうじゃない。いろいろ守ってもらえる制度があるというイメージ。です。

という仕組みがまずもってあるため、経済的な面で見ると会社員のかたは「復帰はなるべく遅くしたい」みたいに思っても許されそうな世界なのかなと思いますが、フリーランスは仕事したぶんしかお金が入らないため「復帰はなるべく早くしたい」と切実に思うかたが多いのではないかと。
もちろん会社員でもキャリアの問題などありますから、なるべく早く復帰したいと思うかたも多くいらっしゃるでしょうけれども。

で、実際問題いつから復帰できるものなのか。これはほんとに人によるとしか言えないのですが、大きく見てふたつの問題があります。

1に、体調の問題です。「産後の肥立ち」といいますが、出産後のハイパーダメージを受けた身体がどのくらいで日常生活を送れるようになるのか。私の場合は、1ヶ月はまったく使い物にならず、その後も数ヶ月は物忘れが激しく、体調も崩しやすかった。息子が風邪を引いたら必ずもらっていました。最近(産後6ヶ月くらいから)ようやくマシに。

そして2に、子どもをどうするのか問題。連れて仕事ができるのか、預けるのか。預けるのなら誰に。私の場合は、4月から、生後3ヶ月で保育園に入れました(といっても1月生まれということもあって、認可・認証全滅。いわゆる高額のベビーホテルです)。

私は、1/5に出産し、仕事完全復帰は保育園入園と同時、4/1でした。その間3ヶ月弱、とはいえ産後1週間くらいから少しずつ仕事をはじめて(1月中は実家で過ごしました)、23月は在宅勤務にしていたので、割とすぐ働いていましたね。確定申告もあったしね。振り返ると結構キツかったのですが(特に自分の体調が)、産後って何をやっていても結局何かしらキツイんですよ。なので結果としてよかったのかなとは思っています。

とはいえ、以下の条件が揃っていたから成し得たこと、というのも事実でして。

・息子が4月から保育園に入った
・息子と離れるのがつらい、かわいくて(あるいはかわいそうで)しかたない、などの気持ちを抱かなかった。またそれに対して周りが同意見だったり寛容だったりしてくれた
・夫もフリーランスのため、23月のうちは週に2回は仕事に連れて行ってくれていた(=夫が育児に協力的)
3月は実家から週に12回母が来てくれていた
・息子が3ヶ月くらいから夜比較的長い時間寝てくれるようになった(これがめちゃくちゃでかい。とにかく睡眠不足は人を魔物にします。私はてきめん心がすさみます。夜2時間置きとかに起きる生活が続いていたら、仕事復帰できなかったと思います)


いつから復職できるか?という問題に正解はないと思います。ここから復帰する!と決めたら、それをただやるのみ、それがその人にとっての正解、ということなんじゃないかなーと。いろいろ言うとキリがない。体調が復活しないとか、子どもが熱出すとか、保育園にそんな早くから入れてかわいそうとか、いろんな声があって、それは全部ごもっともなことです。でも、蓋を開けてみないとわからない。自分のなかで決めちゃったら、できるんじゃないのかなと思います。私がそうだったので。想定外のことは起こります、でも、それはなんだってそうというか。

早めの復帰に余裕はないです。私の場合は体調悪いし、アポイントとかすぐ忘れるし、キャパが(さらに)狭くなってすぐテンパって、夫に八つ当たりしたり大泣きしたり、そんなのしょっちゅうでした。何も考えず走れる(って比喩ではなく実際に足を動かすほうの)ようになったのはほんとに最近で、なんせ妊娠発覚からまったく走っていないんですから、歩くのもままならない産後を経て、シャキッと自分の身体を自分の身体として意識できるようになったのは産後半年くらいではないかなと。それでも、あのタイミングで仕事をはじめていなかったら、自分の存在意義はなんだとか、仕事に対する不安とか、これからどう生きていったらいいんだとか、そういうものに押しつぶされていたと思う。

仕事ってやっぱり人と関われるし反応がある。新生児って全然反応がないんですよ。おっぱいあげても、寝かしつけても、どこか孤独だし、突然泣き始めることの理由がわからない。あれこれ推測するんだけど、あ、これだったんだなっていう手応えみたいなのがほんとないんですよね。今の息子は7ヶ月で、笑ったり頑張ったりうまくいかなくて泣いているとか眠いのを我慢てるとかっていうくらいは見ていてわかるし、まだ不明点多い生き物ですけど、コミュニケーションが取れている実感は得られます。こういうふうになると楽になるんですが、まったくの一方通行はほんとに辛い。


きっと振り返ると全部が正解だったよねというのはこの世の中の定説ではありますが、産後の仕事復帰はほんとそんな感じ。復帰する/しない、するならいつから、なんであっても決めたらそれに集中するのみ!そうして走り抜けて振り返ると、知らないうちに道ができているのではないか。自分の本当の気持ちに正直になることが大切なのではないかなと思います。

11.4.15

産後の身体、私の場合(後編)

妊娠・出産によりおあずけになっている「猫を飼う」という夢。


そういえば、知らぬ間に『四月は君の嘘』が完結してるって本当ですか。うー漫画読みたい。『落語心中』の新刊は買いましたし『進撃の巨人』新刊感動しました。『ONE PIECE』の新刊はもう情報がゴチャゴチャしすぎてて読む気がせず、感動薄め。って結構読んでるか。
岡崎京子展につきましては「生きていく私」に一番感動しました。

と、後編すぐ書くねと言っておきながら書く書く詐欺、誠に申し訳ございません。間があいてしまいましたがめげずに書いちゃいますよ?「お腹より上」編です。


《おっぱい問題》
これだけで本(上下巻)が書けるくらいのトピックスなんですけど、とりあえず言いたいのは、私は大きい胸が好きじゃないってことなんです。妊娠すると胸が大きくなるという話がありまして、妊婦時代そこまで大きくならなかったので安堵していた私なのですが、出産したとたんに信じられないくらい大きくなりました。

や、よくエロアニメとかで、胸を強調した女の子の絵とかありますでしょ?あんなの現実にはありえない(整形を除く)と思っていましたが、あるんですね〜〜〜って感じ。ある日突然自分がその立場に立つことになろうとは。なんてゆーの?ただサイズが大きいだけじゃなくて、形状がほんとにボーリングのボールみたいな感じになるんすよ。地球?みたいな。明らかに男子の夢を形にしただけのフィクションだと思っていてゴメンナサイ。でもって、ほんとにそういう胸になりたくないです。なってみてその思いがより一層強くなりました。ハイ。
ま、今にして思えば期間限定なんですが、あのときは焦りましたね〜。しかも産んだ2日後にはそんな感じになっているんです。そんで下からは悪露がドバドバ出て、お腹は妊婦みたいに出てるし、会陰のあとは痛いしってもうわけわからん状態でしょ?私は無痛だったからまだいいものの、自然分娩のかたは、あれだけの山を乗り越えた後にまさかこんな景色が待っていると思わないのでは。それとも出産の大変さに比べたら〜!みたいな明るい感じなんでしょうか。尊敬しかない。

で、まぁ地球みたいになっていた私の胸なんですが、なんでこんなに張っているかというと、母乳が作られているからなんですよね。あたりまえ。とはいえ不思議な仕組みでして、子がうまれた途端に生成されはじめるんですが、作られたからってそれがすぐ出てくるとは限らないんですね。というのは線が開通していないわけです。乳口(出口)がパテみたいなもんで埋まっているのか、乳腺が細すぎて詰まっているのか知りませんが、これだけ生成されているのに全然出てこない。で、開通させる方法はただひとつ、子に吸わせるしかないのです。

といってもこの世に出てきて2日の子が吸う力なんてたかが知れていて(それでも、誰に教わるでもなくちゃんと吸うからマジでえらいな生命、って思います)、全然開通しない。でも母乳は少しずつ生成されている。だからどんどん地球がでかくなっていくんですよね。

ちなみに、母乳は血液からできているそうです。それになるほどな〜と納得したのは、忘れもしない出産3日目の朝なんですけど、乳輪に血管が浮き出てたんですよね。立体的に血管が。乳輪ですよ?地球儀とか、人生ゲームみたいなボードゲームに山が描かれてると、そこが立体的につくられていたりしますよね?あんな感じです。あれが乳輪に。や、これ、私の身体!?みたいにギョッとしました。はい。

母乳が作られる量に比べて出ていく量が極端に少ない場合、どんどん母乳が溜まっていくので、すなわち血行を止められているような状態になり、かなりの痛みを伴います。だからみなさん、スムーズに母乳を出すために、マッサージに行ったりハーブティーを飲んだりするわけですが、マッサージは上手な人にやってもらわないとそれじたいが激痛です。あと、胸って基本やわらかいものですけど、張ってしまうと、本当に張ってしまうと、そろそろ鏡開きかな?って頃合いの鏡餅のような硬さになります。そのへんはエロアニメとは一線を画しておりまして、コンクリートの壁のように弾力性ゼロのため、顔をうずめることはできないと思われます。

うちの子は「飲まないと死ぬ!」みたいな形相でおっぱいに向かってきていたので吸う力がかなり強く、私は割と早い段階で「母乳出てますね!」って言われるまでになったのですが、おっぱいって2時間おきとかにあげるんですけど、片乳につき10分は吸わせるんです。だから110回以上、時間にすると片乳につき100分以上、チューチュー必死で吸われてるわけですよね。なので数日で乳頭に激痛が来ます。なんというか、噛まれて痛いとかではなく、圧がかかりすぎて乳頭が内出血してない?みたいな痛み。あと、吸われるので表面を保護している皮膚みたいなものがめくれているような感じで、肉がダイレクトに表に出てるというか。吸われるときはもちろん激痛、空気に触れるだけで乳頭がヒリヒリするため、お風呂がキツイ。冬というのもあったかもしれないけどキツかったです。

しかしそんな痛みも1ヶ月すればおさまります。それから、胸の張りとそれによる痛みは3ヶ月くらいすると落ち着いてきます。これって赤ちゃんが吸う量と頻度に胸が慣れてきて、それにあわせて母乳を生成できるようになるからなんだそーですが、人体っていうのはどこまで空気読める感じにできているんでしょうか。不思議で仕方がありません。


《抜け毛問題》
まだ会陰切開のことも知らなかった頃、私をもっとも怯えさせたのが抜け毛問題でして、出産すると嘘のように髪が抜け、前髪がほぼなくなるとかいう話をよく聞いていました。しかも男の子を産むほうがその確率が高いとかなんとか?人によるみたいですけど。

結論から言うと私は抜けました。ってか今(産後3ヶ月)も抜けてます。だいたい産後1ヶ月弱あたりから抜け始めましたね。おっぱい問題にゴールが見え始めた頃。
私はもともと小さい頃から抜け毛が激しいほうで、量も多いので代謝がいいんでしょうな〜くらいに思っている感じだったのですが、それでも(抜け毛に慣れている私でも)少しビビる感じで抜けます。んで前髪も薄くなりました。でも、なくなるほどじゃありませんでした、ってまだわからないですけど。

ちなみに、どういうメカニズムか知りませんが、妊娠中って髪が全然抜けないんです。そのぶん産後に抜けているというハナシもあります。それはそうかもしれないと思うんですが、実際産後抜け毛がすごくて髪が薄くなっているという事実は歴然としてそこにあるのであって、なら仕方ないねで片付けるわけにはいかないというか。ハイ。

一応抜け毛対策としてはふたつやっていまして、これが効いてるからかろうじて前髪も残っているのかな?という感じなので、記しておきます。

1/スカルプケアをする
近年は様々なスカルプケアアイテムが出ています。選ぶのも楽しいですよね〜って感じで、私はORGANIC WAYのものDAVINESのものを妊娠中から使っていました。あ、今も使ってます。先頃VERIMAからも出ましたので今はそれも組み込んでいます。

2/亜鉛のサプリメントを摂る
これは産後、骨盤矯正に通っていたらそこの先生に言われました。抜け毛には亜鉛だよと。なるほどミネラル分が不足すると髪が抜けるってそんな感じかも〜。とさっそくトライ。亜鉛をサプリで摂るとなると、単体推しか、マルチミネラルみたいなものか、それとも総合系か、となります。なんとなくミネラル不足によるものと思った私は、マルチミネラル系で探したのですが、意外と亜鉛の含有量が多くないものばっかりで。結局SOURCE NATURALSMEGA-ONEにしました。これはマルチビタミン&ミネラルの総合系なんですが、亜鉛の含有量は1粒で15mg。日本の某社の亜鉛単体サプリが114mgと考えると色々いいなという感じです。ただアメリカのサプリメントって冗談みたいにサイズがでかいですよね。錠剤を飲み込むのが苦手な人にはおすすめしません。


《目の疲れ、物忘れ問題》
産後は目を使ってはいけない、水に触ってはいけない。
これは昔から言われていることのようで、前者は特に更年期が辛くなるとか。迷信だとか諸説ありますが、体感として目は産後非常に弱っています。なのでやっぱり使わないほうがいいんでしょうな〜という感じ。特に産後2週間くらいはしんどいです。あげなければならない仕事があって11時間とか決めてモニタに向かってやったりしてましたが、辛かったですね。それから、物忘れをはじめ、頭が全然働かない。作った文章を読み直すと支離滅裂だったりしますし、メールの処理ができない、スケジュールが立てられない、昨日の記憶がない(そもそも四六時中授乳してるため1日単位で生活してない)。そういう、オーバースペックというか、何かがショートしてしまっている感じは今もあります、だいぶマシになりましたが。きっと他のことで疲れないように(育児に専念できるように)プログラミングされている人体の不思議展、ってことなんでしょうけど、仕事するには不利というか、仕事すんなよって話なんだなーと。ハイ。
ちなみに水に触ってはいけないというのは冷やしてはいけないということのようです。


という感じで、産後の身体、マジで普通じゃないです。しかもメンタルも普通じゃないです。アップダウンが激しいとか言いますが、私はダウンしかなく、産後1ヶ月はほぼ毎日泣いていました。ちょっとしたことで不安になる、イライラする、絶望的になる、などなど。というのは、私はいわゆる「産後ハイ」ってなかったんですよね(しつこいけど)。10年ぶりに共に生活する両親に戸惑い、我が子を可愛い、愛しい、守ってあげなきゃ、とか全然思わず、自分のしんどさのほうにフォーカスしてしまうという事実があり、それにまた人間失格の烙印を押されたようで落ち込むみたいな日々でした。

ほんの3ヶ月ほど前のことなのに、もう恐ろしいほど昔のことのような気がする。

あの頃の私に、どんなかたちであってもそれでいいのだ、正解はないのだから、と言いたい気持ちはあるけれど、状態が普通じゃないから聞こえないだろうなというのもわかる。そんなこと言ったって今辛いのは変わらない、って返されるだろうなという気がする。でもそんな渦中でも、同じ日は二度となく、少しずつかもしれないけど毎日変化しているんだということはどこかでわかっていた。なんでも変わっていく。だから楽しもうぜとは言い切れないけど、今の気持ちは永遠には続かない。だから大事にしてあげてほしい、という感じです。いろんなものすべてを。負の感情をも。


そして、それは全然今の自分に対しても言いたいことなのですが。