31.1.15

無痛分娩、私の場合

出産前日、夕食後までは時間を持て余しテープ起こしなどをしていました。懐。




いつになったら生まれるのかと不安に思う日々が、すでに記憶にない。
ってな感じの1月末日なわけですが、無事、2015151531分に、無痛分娩で出産することができました。

成功率は50%、などと脅されていた無痛分娩ですが、成功した身からすると、いやほんとに、無痛分娩サイコーでした。とはいっても、何に重点をおくかという問題もあるので、闇雲に無痛を推奨するわけではありませんが、「劇的に楽」なのは間違いないです。「劇的に楽」という事実があって、それを優先したいかどうかです。陣痛促進剤と硬膜外麻酔の投与、というのはダブルであるわけですし、吸引分娩(トイレ掃除みたいなカップで赤ちゃんの頭部を吸引して取り出す)や鉗子分娩(赤ちゃんの頭部を挟んで引っ張って取り出す)の可能性も自然分娩よりは高い(麻酔がきいていて、いきむ力が弱いから)。あと、生まれる日をこちらの勝手で決めるってどうなのとか、ありますよね多分。それらに抵抗があるなら、自然分娩バンザイだと思います。

私が無痛分娩にしてよかったと思う理由はざっくり言うとただひとつで、もう本当に「痛くないから」につきます。といっても、単純に痛いのキライ、みたいな嗜好の問題だけではなく、体力や気力の消耗が少ないということが非常に大きいです。私は麻酔を投与するまでや、麻酔が切れかかって足す前などに陣痛を体感しましたが、マジで信じられんレベルの激痛でした。よく「生理痛がちょっと重くなった感じ」とか言いますよね。いや、私生理痛重いほうですけど、全然、比べものにならないほど、次元の違う痛みでしたよ?気を失うかというくらいの、全身、全神経、全宇宙が痛い、みたいな感じ。全身がうすーいガラス板になって、巨大な爪で引っ掻かれている感じというか。それでも、私が感じた最も痛い陣痛は、出産の5時間くらい前のもの(その後麻酔が効いた)なので、こんなのまだ序の口なわけですよね。自然分娩のかたはいったいどんな激痛を乗り越えてらっしゃるのかと、想像もできません。はい。

痛みに耐えることって、ものすごく気力・体力を消耗します。あれ以上の陣痛を長時間、生むまで体感するってことは、生死をさまようレベルなので、最中はもちろん、その後の消耗もものすごいと思います。でも無痛は助産師さんと談笑しながら生むレベルなので、少なくとも気力の消耗は大幅に少ないです(そのかわり、自分が相当体力を消耗していることに気付けないというトラップがありますけれども……詳しくはまたの機会に)。早く回復したいかたには、無痛もひとつの選択肢としておすすめします。


さて、出産までの経緯を。ちょっと長くなりますのでご容赦ください。


《出産前日》

昼過ぎに病院に到着。4人部屋に案内される。
この日のメインは、夕食後に行われる「浣腸」「バルーン」

まず浣腸ですが、これは衝撃的な体験でしたね。出産時いきむときに余計なものが出ないよう、あらかじめ前日に浣腸で出しておく、という認識なのですが、今は出産前の浣腸に否定的な見方も多いのかな?
薬剤を肛門から注入した後、すぐにトイレに入って、100数えてから出してください、と言われたのですが、2秒くらいしか我慢できませんでした(食事中のかたスミマセン)。今まで感じてきた便意のMAXが下北沢SHELTERだとしたら、浣腸のそれは幕張メッセ、みたいな感じですね。すごいスケールなので、辛さを感じる余裕もなく、ただ圧倒されたというか。びっくりした〜!みたいな感じ。アレヨアレヨ(夢野久作風)という間に終わります。

その後、バルーン処置。
バルーンとは……子宮口を開くために入れる水風船のようなもの。開かないでおなじみの鉄の扉こと私の子宮口ですが、バルーン入れる際も先生から「あー、ほんと、全然開いてないですね」と100万回聞いた失笑混じりのセリフをいただきまして、切ない気持ちになりました。「ま、一応バルーン入れとくけど、効かない確率90%って感じですかね」とは、実際には言われてないのですが目が言ってる、目が。先生。

ちなみにバルーンは、経験者の感想がそれはそれは様々で、

A: まったく痛くない。
B: 入れるときが激痛。
C: 入れるときはそうでもないけど、入れた後が痛い。

と分かれるんですが、私はCでした。
助産師さんに「バルーンは、子宮口になじむまで4時間くらい痛みがあるかもしれないけど、なじんでしまえば痛くないですよ」と言われていたのですが。

痛みは増すばかり。

いや、ずっと痛いわけではなくて、痛いのは1分くらいなんです。それから30分くらい痛みが引いて、また痛くなるの繰り返し。「いつ痛くなくなるんだろう」という思いとは逆に、その痛みの間隔がどんどん縮まっていく。今思えばこれ完全に陣痛なんですけど、そのときはひたすら「バルーン 激痛」とか検索していました。痛みがある=子宮口が開いてるということですよ、といったインターネット様のお言葉を励みに一晩乗り切り、当然一睡もできず。


《出産当日》

●陣痛室
6時から処置しますので545分には来てください、という前日の指示通りにナースステーションへ。陣痛室に案内される。
この日はほとんどをこの陣痛室で過ごしました。ベッドとモニター(胎児の心拍数と妊婦の子宮収縮の具合を測定する分娩監視装置。臨月のノンストレステストに使用するものと同じ)が置かれている小さな部屋で、陣痛が起きてて分娩待ちの人が過ごす空間ということなのでしょう。

私は無痛分娩なので、前日22時から絶食、水も飲んではいけない状態でしたが、ベッドには200mLOS-1が置かれており「これを昼にかけて少しずつ飲んでください」とのこと。6時間で200mL1時間に30mL、つまり大さじ2しか飲めねー。しかも子宮口を開く錠剤を数分おきに渡され、これを飲むときにOS-1が必要。そのうえ、錠剤って喉渇きません? シルクロードをラクダに乗って旅する行商の気分を味わいましたね。あとはひたすらベッドに横になって、モニターから出力される子どもの心拍と子宮収縮のグラフを見つつ、子どもの心拍音を聞きつつ、定期的に来るバルーンの痛み(今思えば陣痛)に耐えるのみ。しかすることがない。暇だけど忙しい。

●内診
8〜9時くらいか、内診に呼ばれまして、先生にバルーンを抜いてもらい「あ、子宮口開いてますね。これ今日産めるんじゃないですか」とのお言葉をいただく。それを聞いたとき、なんつーか、モーゼの前に海がゴワーと開いて道ができる映像?が浮かびましたね脳内に。先生に「ありがとうございます!ありがとうございます!」と号泣で握手を求めたい気分でしたが、先生のテンション、そんな感動は分かち合いませんよ的な基本失笑モードというか、むしろこれ、この人の微笑みだったのか?こんな朝から夜(昨日バルーン処置してくれたのは9時を回っていた)まで働いて、しかも無痛担当の先生はこの人だけなので、手術と診療と、当然妊婦のみなさんの定期検診もこなしているわけで、いつ寝ているんだろう&消費エネルギーは最小限になるよなと妙に納得したのでした。

●硬膜外麻酔&陣痛促進剤
また陣痛室に戻り、そろそろ痛みがシャレにならなくなってきたことを訴えると、では麻酔と促進剤打ちましょうか、となり、手術室へ。まずは麻酔の処置。
無痛分娩は硬膜外麻酔なので、背中から背骨(脊髄神経を包む膜の外側)に細〜いチューブを入れます。これが麻酔の通る管となり、常に背中から細いチューブがダラーと出ている状態に。必要に応じてチューブの先に注射器みたいなものを設置し、麻酔を注入します。

麻酔の処置も同じ先生がやってくれるっていう、どこまで万能なのか。朝食は召し上がったのですか?といらぬ心配をしてしまうのですが、背中をめくった先生が一言、「これ、いったい何ですかね」
私は背中に☆マークの墨が入っているのですが、直径510センチくらい?朱赤みたいなオレンジ色で。自分からは見えない場所だし、入れたの昔だし、まぁ忘れてますよね普段は。一瞬なんのことかわからなかったのですが、

私「なんというか、入れ墨ですね」
先生「消せますか?」
私「や、消えないですね入れ墨なんで」
先生「インクが皮膚に入ってしまっているということ?」
私「そうです、あ、麻酔できないですかもしかして」
先生「ちょうど麻酔の場所なんですよね」

と言われて、こんなアホみたいな理由で無痛分娩ならずか?と焦ったものの、その☆がベタ塗りでなくアウトラインのものだったため、

先生「この絵の真ん中に針通してもいいですか?」
私「いいですいいです、全然いいです」

ということで事なきを得ました。塗りつぶさなかった25歳の私に拍手を。
で、背骨にチューブを刺すって話はいかにも痛そうなのですが、これが全然痛くない!です。知らないうちに終わってます。マジで。

いっぽうで陣痛促進剤は、腕への点滴によって注入します。これも針が太くて痛いと聞いていたのですが、全然普通です。それより、バルーンを抜いたはずなのにいっこうにひかないこの痛み(だからそれ、陣痛なんですけどね)をなんとかしてほしい。

●心拍の不安
陣痛室に戻り、いっこうに痛みがおさまらないことを訴える。子宮口が開かないでおなじみの私ですが、新たな問題勃発で、まさかの麻酔が効かない、効きにくい。ということが判明。またしても分娩劣等生の因子が明らかに。これでもかというくらいに麻酔を打ってもらい、一時おさまるがまたすぐ痛くなりさらに注入してもらうの繰り返し、という燃費の悪さ。

同時に促進剤も打ちつつ、子宮口も順調に5cm6cmと開き(全開は10cm)、ようやくペースが出来てきた頃、助産師さん2名が顔色を変えて飛んできた。聞けば子どもの心拍が半分以下に下がってしまっているということ。陣痛促進剤が原因らしく、促進剤の種類を変えたり、私が大きく深呼吸をすると一時的に持ち直すが、よくならない。しかし、促進剤の投与をやめてしまうと今度は子宮口が開かない。またしても、無痛分娩(っていうか分娩そのもの)ならずか?もはや帝王切開か?の危機。
先生は「だましだまし行きましょう」、助産師さんは「危なくないですか」と意見が割れつつも、先生に従い進めていくことに。

そんなこんなで14時頃、いよいよ子宮口が全開になる。

●そして分娩室へ
麻酔で足が痺れて歩けないので、車椅子で分娩室へ移動。分娩台を目の当たりにするのは初めてで、こんなドラマチックな装置の上に乗るのですか、こんなありえない姿勢をとるのですか、と躊躇しましたが、自然分娩の人は躊躇すらしてる場合じゃないんだろうなーと冷静に思ったり。

ちなみに、分娩台では不思議な姿勢のままで思いのほか待たされました。先生の手が空かないのか、私の身体の出産準備が整ってないからなのかよくわかりませんが、旦那さんとふたりで分娩室に放置されてた時間が結構長かった。が、分娩室に時計がないんですよ。なのでどのくらいかはわからず。しばらくすると助産師さんが来て、いきみの練習を行いました。

出産のいきみは、陣痛にあわせて行い、陣痛が去っていったらリラックスします。だから、ずっといきんでいるわけではない。数分おきなんですよね。23分くらい間があきます。私の場合、麻酔がバッチリ効いているので痛みはないのですが、陣痛が来ると子宮収縮するのがわかります。それにあわせていきむ。とはいっても、下半身に麻酔が効いているので、いきんでいる実感がないんです。
いきみかたを説明してくれた助産師さん曰く「私のほうに赤ちゃんを飛ばすつもりで!!!」。その助産師さん、すごい美人で可愛いんですよ。それが「私に飛ばすつもりで」って、ほんと大変なお仕事だなと尊敬。さておき、感覚がないので、こんな感じかな?っていきむのですが、ほんとに私はいきむのが上手だったみたいで、これが結構すぐ生まれたんですよね。覚えてないですが実感としては10回ほどいきんで生まれたくらいの。3回くらいで「髪の毛が見えましたよ」、そこから先生を呼んで来てもらって、会陰切開して、45回で「頭見えてます」、10回くらいで「もういきまないでください!頭出てるんで!」って言われました。頭出たらいきんではいけないんですね。知らなかったよ。

「頭出てるんで!」って言われてからすぐに、もうなんていうか、ズルッ!!!って感じで赤ちゃんが出てきたのがわかりました。もっと血だらけで気持ち悪い感じかと思ったら、意外と赤ちゃんはキレイで。すぐに胸のところに乗せてもらったのですが(カンガルーケア)、正直「なんなの?この生き物……」って印象でしたね。感動とか嫌悪とかでなく、純粋に疑問。感情としては平熱でニュートラル。ただ、見たことないものがここにいる……て感じ。しかもよく見ると、もうこんなにちゃんと爪がある!むしろ伸びてる!みたいな。あと、いきむのがうまくいったのと、赤ちゃんが頭の形を縦長に変形させて生まれてきてくれたので吸引はしなかったのですが、そのせいで頭が豆みたいに長くなってました。この子が自分でしたことだけど、これじゃ吸引も変わらなくね?って感じで。不思議です。

その後、胎盤が出て、会陰を縫って、という作業が行われるも、もちろん麻酔で感覚はないし、思いのほかスムーズで、やりきった感ゼロ。ほえ〜、もう終わりかぁ、というのが正直な気持ちで。縫い終わったら先生から真顔で「ご満足いただけましたか?」って言われたのには笑ったけど、あとはひたすら助産師さんに「会陰のあとはどのくらい痛いんですかね?」って訊いたりして、「それほどでもないですよ、それよりも赤ちゃんが可愛くて気にならない、ってみなさんおっしゃいます」との答えにうーん、そんなものなのかな、どうなのかな、とモヤモヤしたり。

実際はとんでもなく消耗してて、病室に戻ったあとトイレに立ったら血の気が引いて気を失い倒れたりしたのですが、精神的にはほんと元気で。「いつまでたっても子宮口が開きませんね」「麻酔全然効かないですね」とダメ出し続きだった末に「いきむのが本当に上手!」と最後アゲてもらって有終の美、生まれた子も健康で問題なし、とひとまず出産は無事終了したのであります。

次はまた、とんでもない日々の幕が開くのですが、それはまた次回に。

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